食べ物語り(寿司屋冷戦編)つづき

まず一勝、って所か。
そんな事を心の片隅で考えつつも笑顔は忘れない。
「お好きなネタがあったらドンドン言ってください」
客の緊張をほぐす言葉ももちろん忘れてはいけない。
「次はタコと白身の昆布〆を」
ドンピシャだ、来ると思ったぜ!
昆布〆はタダ白身の切っ付けを握るのとは訳が違う。
淡白な白身に昆布の旨味を加えるって仕事がしてある。
しかも時間とタイミングも難しいなかなかの職人技なのだ。
タコも店によっては生を買ってきて塩もみでぬめりを取り、叩いて柔らかくし、硬くならない程度に煮る。この時間の判断もなかなか難しいのだ。
いかにもギラな客に市販のボイルタコは出せねぇってもんだ。
これも各2貫づつ下駄に置く、ただし。
「タコは片方軽く塩してますんでそのままでどうぞ」
こちらからもあえて挑戦だ。
客は言われた通りに食し、そしてまたうなずいた。
食い終わると客も負けじと牙をむいてくる。
「ボイル海老を」
来た来た来たキタ~~!
海老といって甘海老、ボタン海老に走らずあえてのボイル海老。
竹串に刺し、生でもなく硬くしすぎもせずにボイルし、冷水で一気に冷やして串を抜き、皮をむき、腹開きにして、甘酢につける。
やはりこれも一手間かかった仕事物なのだ。
下駄の上に乗せた海老を瞬時に平らげる。
客もエンジンがかかってきたようだ。
「赤身を下さい」
この客、完璧だ。
寿司屋の喜ぶツボを押えてやがる。
大トロ中トロ美味くて当たり前、赤身の目利きが出来てこそ本当の寿司職人ってもんだぜ。
冷蔵設備の無い時代、マグロなんてある意味で下魚、トロの部分なんぞは猫も食わない猫またぎとまで言われていたほどだ。
マグロはヅケで食うのが普通だったのである。
赤身を選ぶ目、処理する技術があっての寿司職人なのだ。
「へい、赤身お待ち」と下駄へ
「こちら一貫、ヅケになってますんで」
客の顔がほころんだ。
真剣勝負といっても客を喜ばす精神を忘れちゃいけない。
「アナゴ、お願いします」
早々に赤身を食した口からつぎの注文が発せられる。
穴子といったら光物に並んで寿司屋の仕事の醍醐味の一つ。
甘めに柔らかく煮込んだ穴子の上にさらに煮詰めた煮汁(ツメ)を付ける。
しかも握る寸前に軽く炙るアフターケアも忘れない。
ヤバイ、あまりにも完璧すぎる客からの注文に涙が出そうだぜ!
穴子は一貫にツメ、一環に柚を少々。
客がわずかに、しかし深く頷いている。
「干瓢巻きと玉子を下さい」
いよいよ〆にかかってきたようだ。
干瓢は戻しと茹で、煮つけと時間のかかる仕事ものだ。
地味で安いネタだが一番手間隙架かる食材だ。
これを海苔巻きにして一本を4等分する。
味の薄い具材は6等分濃い具材は4等分と知っていたかな?
そして玉子、これは甘いので「デザート」だと言う人もいるが玉子の握りがシャリ(酢飯)の味が分かりやすいと言うところからシャリの味見てきな意見もあるとか。
「干瓢と玉子お待ち」
出された二品をササッと平らげガリをつまんでアガリで流し込む。
湯飲みをトンッと置いて一言。
「ご馳走さん、お愛想」
「へい○○○○円になります」
代金を置いて去っていく客。
扉を開け暖簾をくぐる瞬間、こっちを振り返り。
「旦那ぁ、いい仕事してるねぇ」
「ありがとう、ございます」
カララララ・・・ピシャッ
客は帰り、静寂が訪れる。
「この勝負果たしてどっちの・・・・」
俺はゆっくりと包丁を置いた。(完)

テーマ : ショート・ストーリー
ジャンル : 小説・文学

食べ物語り(寿司屋冷戦編)

私の名前は、まぁ江戸前五郎とでも呼んでもらおう。
かつては高級寿司店で花板を勤めた寿司職人であり、今では街角の寿司店店主として日々を過ごす下駄履きの生活者である。
カララララ
「いらっしゃいませ」
暖簾をくぐり扉を開けて入ってくる客に瞬時に反応。
客はすぐには席に着かず店内を見渡している。
ラフな格好からしてサラリーマンでも無さそうだ。
ボウズって年でもないがオッサンと言うにもまだ若い。
普通の奴じゃ気付かないだろうが俺にはわかる。
奴は・・・・・ギラだ!
プロ、または同業者の総称、普通の客と違い自店との違い、粗を探そうとして目がギラついているやつのことを業界用語でそう呼ぶ。
暫くすると客はカウンターのしかも店主である俺の前にどっかりと座った。
こっちも負けるものかと声を落とし。
「お飲み物は何にしましょう」
するとその客は間髪いれずに「アガリで」
アガリとはお茶、つまり最初から酒やつまみなど不要の握り目当てと言うことだ。
この段階で疑惑は確信に変わる。
時間で言えば午後三時半、昼のピークを終えた後、午後五時過ぎの上客を迎えるまでの間のアイドルタイム、この時間に来る客と閉店間際の客はなかなかの曲者だ。
そう、まさしくギラだ。
「何からいきますか」
そんな考えはおくびにも出さず注文を聞く。
「コハダと・・・〆サバ」
やはりな、予想どうりだ。
俺は手を動かしつつ心の中で呟いた。
最初に光物、特にコハダ、〆サバの仕事物を選んでくるあたりが心憎いじゃねぇか。
本来の意味で鮓(スシ)は魚を長期保存するために酢や調味液に漬けたところから始まるもの。
長じて光物の処理、仕事は寿司屋の技量を測る最たるものなのである。
「へい、お待ち」
客の前の寿司下駄に二貫づつのコハダと〆サバを置く。
客はこの二種の寿司を黙って食し、そして僅かにうなずいた。
(つづく)

テーマ : ショート・ストーリー
ジャンル : 小説・文学

料理は・・・・・

色々な漫画やCMなどで言われる言葉ですね。

料理は「勝負だ」「心だ」「愛情だ」「創意工夫だ」
人それぞれ十人十色です。

たった一つの料理しか出来ない人から百~千のレシピを持つ達人までその幅はあると思いますが、料理に対して「料理は○○○○だ」と言う理念、思想を持つことは大事だと思います。

漫画のように大袈裟にならないまでも、一つの「物」を作るときにこめる気持ちはどんな趣味、道、仕事でも必要で大事ではないかと思います。

飲食店でも厨房、ホールと分かれている店にいるので、と言うより分かれているからこそ、料理は「食べる人の喜び」だと考え、信じてます。

どんな業種においても、同じ材料で同じ物を同じ条件で作った時何らかの理念、思想を込めたほうが「完成度」は絶対高まるものなのだと思います。

料理の完成度だけでなく自分自身の心、技も高まるはず。

自分自身の行動、仕事の考えに「芯」を作ると「土台」も出来てしっかりしてくるものではないでしょうか?

テーマ : ひとりごとのようなもの
ジャンル : 日記

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